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やりたいことが分からない読書録2『天然知能』郡司ペギオ幸夫

内容は難しくて途中で読むのをやめてしまったのですが、一つだけ鮮明に覚えている箇所があって、と言っても本当にそう書いていたかは定かではないのですが、「廊下を歩いているときに、隠し扉があるかもと思って扉を押してみる」、そんな感覚について書かれていました。

それが天然知能、という話だったかもしれません。ただ、当時はど真ん中に火の玉ストレートが来たような感覚で、僕にとっての人生や日常の面白さはここにあるのだ、と思った記憶があります。

どこからともなくいつかやってくる何かを受け入れる、待ち構えるということで、もっと言うとそれを楽しむ感覚という風に解釈しました。

確か『暇と退屈の倫理学』にもそんなくだりがあった気がします。ここで初めてこの感覚に出会ったというよりは、どっちかというとうっすらとあったなんか好きな感じ、がうまく言語化されているのを見つけた、というイメージでしょうか。

 この後過去を振り返っていく中で僕にとっては、「遊び」が大事なんだと気づいていくのですが、この遊びというのは、自分が意図していない何かが起こるイベントだと思っていて、もっと言うとふいに来た何かに飛び乗り、その先でまた次なる何かが発生して、その流れに乗る形で、流れに流れていくのが面白いと思っています。

これは受け身になるのとは違っていて、その何かが起こりそうなところまでは自力で向かっていきます。「遊び」で言えば、遊ぼうとするところまでは自力ですが、そこで何がどう展開されるかはコントロールすることはできません。

これも後に知るのですが、人間は秩序とカオスのバランスが気持ちいいようです。自然界には1/f ゆらぎ、というゆらぎで溢れていて、波や小川のせせらぎ、焚火などをボーっと眺めているだけでリラックスできるのは、それらが1/f ゆらぎの性質を持つからだと言われています。

遊びもコントロールできなさ具合がちょうど気持ちいところにあるんじゃないかと思っています。というか、隠し扉がありそうだと思う感覚がまさにこれで、壁にタッチするところまでは自分の意志で自発的に行うが、それが実際にあるかどうか、さらにその先で何が起こるか、は全く想像できません。でもこのバランスが面白いってことなんです。そう感じていたんだと思います。

でもその時は毎日実験レポートを書くだけの生活だったわけですから、100%受け身の状態です。これで気持ちいいはずがありません。

そこで人の誘いに全部のっかるようにしてみたのですが、最初にいい感じに回り始めたかもしれない、と思ったのは、機械学習の勉強会に参加してみたときです。

大学の先輩に教えてもらったPythonで機械学習をやってみようと思い、毎日勉強したことをSNSに投稿していたのですが、そのつながりで勉強会に参加することになりました。ここまでは自主的にやったことです。でも、本当はここについてもSNSのつながりから現実のイベントに参加するのは、一つ新しい経験ではありました。

で、実際に行ってみると、そこで知り合った社会人のお兄さん2人から、今度自分たちが今作ってるアプリの試作品をプレゼンして意見を募る会を開くから、友だち連れてまた来てよ、と頼まれました。頼まれごとも全乗っかりしていましたので、「はい、喜んで」と即答しまして、友だちと3人でまた向かいました。

たったそれだけなんですが、それが楽しかったんです。そこで何かあったわけではありません。それ以降連絡を取り合ってるわけでもありません。でももう一つ外から見たその一連の流れが、気持ちよかったんです。まさに流れている感じでした。この逸脱を生むのが日常の遊びだと思っています。


天然知能 (講談社選書メチエ)

1,『私の財産告白』 本多静六

やりたいことが分からない読書録3『マンガ 老荘の思想』