ここにきてゴリゴリのビジネス書でしかもかなり有名なやつについて書くのはなかなかに抵抗なくもないのですが、これはいい本だった記憶があります。基本的にはよくあるやりたいことを全部やりましょう系の話で、はいはいって感じ読んでたのですが、その中で、短くてもいいからその瞬間ごとに熱くなれることを繰り返していくって感覚が印象に残ってます。
というか、多分僕はバランスをかなり重視していて、何か一つのことに偏ってると調子を崩しやすい傾向があるんですね。
そもそもやりたいことがあるとかないとか考えだしたのも、大学の課題や実験レポートに追われていた時に違和感として湧き上がってきたことが始まりなので。博士課程まで進むと一日の円グラフがほとんど物理で埋まってしまうような気がしてそのルートを選ぶのもやめました。
で、この本でソースの車輪というのが出てくるんですが、それが面白くて、家族、友人、学び、社会貢献などいくつかの項目に対してワクワクすることを書きだしていこうって書いてます。正直今は「ワクワク」って言葉はあまりピンとこないんですが、でも当時はジャンルに分けて考えていくっていうのが新しく感じました。
ただやりたいことを考えようって思うと難しいですが、いくつかのジャンルごとに、これまでどんな瞬間が楽しかったとか心地よかったと考えていくと意外とあっさり出てきたりします。
僕はキャッチボールとドッチボールがめちゃくちゃ好きなんですが、やりたいことって別にそういうちょっとしたことでいいのかって思ったんですね。
つまり、没頭しろ、みたいなことを言われるせいで何か壮大なこと、一生それだけやっていられれば満足できるようなことを見つけてこないといけないと思いがちですが、この本的には、前のめりにやれたり気持ちが高ぶってくるようなことであれば、1日5分だけでもいいというわけですって発想です。その代りそれをすべてのジャンルに対して全部ひたすらやっていくってことです。
なるほどと思って、久しぶりにキャッチボールをしたくなりました。でも今すぐやれる相手が見つからなかったので、近所の公園にって一人で壁あてをしました。じゃあやっぱりそれだけで楽しいんです。これは小学生の時に毎日友達とやってた時の記憶から来てると思うんですが、本当に5分だけでも十分満足できるんですね。そこから大学の同期や研究の合間に後輩とやってみたりするんですが、10分、20分で、体力的には疲れても気分としてはモリモリ上がっていくわけです。
今になって思うのは、ここでのポイントは、ちょっとでもやりたいと思うこととか昔やってて気持ちよかったことを、今日できる形で今すぐやるってことなんだと思います。
つまり、本当はこれやりたいけど準備が必要だから、お金が今はまだないから、一緒にやれる人がいないから、と考えるのではなくて、じゃあ、規模や時間を縮小してでもいいから今の自分がそのエッセンスを味わうには、そんな時間を過ごすにはどうするかって考えて、速攻始めるってことなんですね。仮に本当の理想の形はあったとしても、そこでピックアップされるものはほんのちょっと触れてみるだけでも嬉しいものなはずです。というか、それがここで言うところのワクワクなのです。
だから楽器をやりたければ今日楽器屋に行けばよくて、畑をやりたければペットボトルに土を集めてこればよくて、キャッチボールしたければ壁を探せばいいし、プログラミングしたければPythonをインストールすればよくて、英語をしゃべりたければduolingoをダウンロードすればいいわけですね。5分でもやればその5分だけは学校がしんどかろうが仕事がつらかろうが嬉しい時間です。
それをいろんなジャンルで考えてひたすら毎日やっていければ、それって充実した一日ってことになりますよね、ってことがこの本で言いたいことなんだと思います。
僕としてはそれとは別でもう少し抽象度の高い人生の方向性のようなものを考えたいわけですが、これも結局はじゃあそのこまごました嬉しい時間を全部満たせるようなライフスタイルや人生ってどんなものかって考えるわけですね。つまり、ここでの断片からボトムアップ的にいわゆる自分軸とか人生の軸のようなものを見出すこともできます。
というか、いきなりそういった大なるものを考えるのが難しいからこそ、今後また分かるときが来るであろう”それ”を具体に降ろしてきたものとして今日のキャッチボールがあると捉え、それ以外にも5分やるだけで嬉しくなれるようなものを書き出していったとき、それがあなたにとってのソースですよ、というわけです。
そういう文脈において読むのが面白いです。ちなみにそうやって書きだされたものを統合した時に無限にエネルギーが湧き出てくるようなエネルギーの源泉と言えるようなものが見えてくるのだと僕は思っています。それを知っているからやりたいことが分からないと悩むこともなくなっていくんです。