コラム(?)

『暇と退屈の倫理学』要約・感想/五感を使え、楽しみの循環を巻き起こせ

先ほど読み終わってめっちゃ面白かったので、感想などまとめていきます。

主なテーマとしては
「どのように退屈と向き合っていくか」

これはすなわち
「どのように日常を過ごしていくか」
ということでもあります。

僕は最近普通に生活していて
退屈に思うことは減ってきましたが、

その中で大切にしてきたことが
きれいに言語化されているような感覚で

「やっぱそれ大事よな~」

って思いながら読んでました。

今まさに退屈の真っただ中にいる場合は
実際に全部読んでみると
ハッとさせられまくると思います。

それでは早速!

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結論:【五感全てで目の前の”物”に向き合え、楽しみの循環を巻き起こせ】

この本の主張をワンセンテンスにまとめるとこれ。

「五感全てで目の前の”物”に向き合え、楽しみの循環を巻き起こせ」

僕としてはこの解釈が一番気持ちいいです。

ただ、本の中では
結論だけ読んでわかった気になるな
と書かれていました。

でもそうすると何も書けなくなってしまうのでw、
なるべく丁寧にこれがどういう意味か
見ていこうと思います。

人間はいつから退屈し始めたのか

そもそも人間はいつから退屈し始めたのか。

序盤に出てきた話題ですが
まずこれがめっちゃおもろい。

遊動生活と定住生活

ここでは遊動生活と定住生活がポイント。

人間はもともと遊動生活をしていました。

集団で移動しながら
狩りをして暮らしていたわけですね。

そこから定住生活へと移っていき
今の我々のような暮らしになっていきました。

遊動生活では五感がフルに発揮される

じゃあ遊動生活と定住生活の違いは何なのか。

それは、

「人間の本来の能力が存分に発揮されているか」

遊動生活では、日々その環境に適応していく必要がありますよね。

・どのへんで獲物が取れそうか

・水はどこで確保できそうか

・どこに危険が潜んでいるか

常にこの辺のことを意識しておかないと、生きていけません。

人間の探索能力がいかんなく発揮されてる状態ですね。

定住生活では探索能力の使いどころがない

一方、定住生活ではどうなるか。

同じ場所にずっといるわけだから
一度環境に適応してしまえば
あとはもう楽勝です。

ただここが落とし穴で、

楽勝ということは遊動生活で躍動した
探索能力の使い道がなくなります。

毎日同じ景色の繰り返しで、
それまで五感をフル稼働させることになった刺激もありません。

ここに退屈が生まれます。

定住生活では
人間本来の能力を発揮するタイミングがないんですね。

せっかくの力を持て余しまくっていると。

そこでこの有り余る活力は精神的な方面に向かいます。

これによって文化が生まれます。

宗教とか芸術とか。

人間は動いてなんぼ

ここまで見ていったときに、
キーワードは「移動」です。

元々遊動生活では、各地を動き回ってたわけです。

だからこそ環境に適応する必要があり、
人間本来の力が十分発揮されていた。

これは物理空間の移動ですね。

それが定住生活になると、
物理的には一点にとどまることになります。

持て余されるエネルギーは心理的な方面へと向かい、
情報空間での移動によって何とかやり過ごすようになります。

これが定住生活における人間の気晴らしです。

ここで思うのは、

「やっぱり人間は動いてなんぼ」

ってことですね。

・慣れたら環境を変えろ

・新しい挑戦していけ

よく言われることですけど、
それが人間本来の在り方なんだと思いますね。

同じ場所で同じことの繰り返し。

この生活ではせっかくの人間の適応能力、探索能力が機能しません。

これが退屈ってことですね。

「物理空間」「情報空間」両方の移動

移動することが本来の在り方だと言ったんですが、

「物理空間」と「情報空間」
両方の移動が大事になってくると思います。

僕は大学院で物理をやってますが、
これは情報空間での移動にあたります。

10次元時空で粒子がどんな振る舞いをするか
頭の中で考えるわけなので。

ただそれだけになるとちょっと体も動かしたくなってきます。

僕は数年前から
「遊び」が死ぬほど大事だと思うようになりました。

それには

・自然に触れる
・五感を使う
・体を使う

みたいなニュアンスがあるんですけど、
遊動・定住の観点からもやっぱりそういうことなのかなって気はしますね。

ちゃんと遊ぶことが人生においていかに大切であるかという話

なぜ退屈するのか

結論に向かう準備として次は、

「消費社会において人間が退屈させられるメカニズム」

を見ていきます。

ここでのポイントは、浪費と消費の違いです。

浪費とは

浪費とは、過剰に物を受け取ることです。

必要以上に物がいっぱいあることです。
物を受け取ることには限界があります。

つまり贅沢です。

狩猟時代の人間は
不便なように見えて実は豊かでした。

なぜならその都度食べ物をとる必要あるけど
貯蓄できないので余ります。

物が余るのは贅沢であり豊かです。

消費とは

一方消費は、観念を受け取ることです。

ここがあんまりなじみないけど大事なところで。

消費は物ではなく観念なんですね。
だから限界がない。
際限なく受け取れてしまう。

ここに退屈が生まれます。

本に出てる例だと、
インスタで有名だからその店に行く場合。

この時はそこで提供されている商品とかサービスは関係ないですよね。

「みんな行ってる」とか「有名だから」とか。
観念・情報を享受しに行ってます。

消費では満たされない

この浪費と消費の違いに着目すれば、
なぜ僕たちが満たされないのか退屈するのかわかります。

消費は観念を受け取るものだから限界が来ません。

満たされることがありません。

だから気晴らしのつもりが
観念を受け取らされ
満たされることなく退屈してしまいます。

物を楽しむことで退屈を回避する

そこで解決策となるのは
物を楽しむことです。

観念を受け取る消費では満足できないので、
物を受け取る浪費に回ります。

僕がしっくりくるのは

「味わう」

という感覚です。

ここでいう物は、
芸術とか娯楽とかですね。

例えば、僕は芸人のラジオとか好きでよく聞きます。

でも何か別の作業しながらとか
ご飯食べながらとかになりがちです。

これがよくないってことですよね。

今まさにその対象に意識を向けて
その物をちゃんと楽しむ。

マインドフルネスとか
シングルタスク的な発想に近いと思います。

物を楽しむには訓練がいる

ただ、物を楽しむには訓練がいるわけです。

何の知識もスキルもなければ
楽しむのは難しいからです。

例えば僕はプロ野球が好きですけど、
全く野球知らない人が甲子園に行っても
何にも楽しくないはずですよね。

17年ぐらい見てきたことがベースにあるから
配球を予想したりいろんなデータを見て
楽しむことができます。

音楽でもそうだと思います。

ギターを数年前に始めたんですけど、
今までなんとなくで流してた曲の奥で聞こえる
アコギやドラムに耳を傾けるのもおもろくなりました。

つまり、楽しむには訓練が必要です。
訓練することでより楽しめるようになります。

これは「教養」が大事だということではないです。

食事や音楽を楽しむときのように、
体や五感に結びついたものも含めての訓練です。

人間の思考と世界の崩壊・創造

これが結論を理解する最終準備です。

思考と世界の崩壊・創造について見ていきます。

世界のとらえ方は個体ごとに異なる

まず、人間と他の動物では世界の見え方が違います。

体の構造が違えば
何によって外部の情報を受け取るかも変わってくる。

例えばミミズとかモグラは目が退化してます。

だから人間とは世界のとらえ方が違ってくると思えますよね。

人間同士でもそうです。

物理を勉強してきた僕とそうではない人では
太陽や月を見たときに浮かぶことが変わってくるでしょう。

経済に明るい人と僕では
株のニュースを見たときに浮かぶことが変わってくるでしょう。

これは世界をどう見ているか、が違うということですよね。

世界の崩壊と思考の強制

この各個人ごとに異なる世界に、
何かが「不法侵入」してくると書かれてます。

人間が環境に適応し習慣になり
安定して見えてる世界に何かがやってきます。

僕の解釈では違和感だったり
その時の価値観で理解不能なものだったり。

これがやってくるとどうなるか。

それまでの世界が崩壊します。
それまでの常識が崩れる感覚ですよね。

そのとき「思考が強制」されます。

不法侵入してきた異物に対処するために
思考せざるを得ないって感じですね。

で、それを経て新たな世界が創造されます。

一瞬分かりにくいので、ちょっと例を見てみます。

物理学における古典論と量子論

また物理の話で非常に申し訳ないですがw、

物理には古典論と量子論があります。

古典論は、高校とかでもやるニュートン力学ですね。

量子論は、比較的歴史の浅いいわゆる量子力学ですね。

で、量子力学はニュートン力学とは全然考え方が違うんですよね。

なので高校から大学の序盤まで古典論をやってきて、
最初に量子力学をやるときパニックになります。

これが世界の崩壊ですw
そこで今までの物理に対する感覚が崩れます。

ただその後教科書読んで思考することを通して
量子力学がわかってきます。

それによって量子論を取り込んだ
新たな物理に対しての見方が得られます。

これが世界の創造です。

伝わるでしょうかw

ここまでをまとめると、

・人間にはそれぞれ安定した世界の見方を持っている。

・が、外から異物がやってきてその世界は崩壊する。

・そこで思考を強制される。

・その後新たな世界が創造される。

こんな感じですね。

いよいよ結論です。
これがどう退屈と関係するのか。

楽しみのサイクルを回していくということ

改めて確認しておくと結論は、

「五感全てで目の前の”物”に向き合え、楽しみの循環を巻き起こせ」

でした。

ここまでくればこの意味が分かります。

つまりこういうことです。

・消費社会では、気晴らしが観念を受け取る消費になっている。

・だから満たされることはなく、そこに退屈が生まれていた。

・これを観念ではなく物として受け取る、つまり消費ではなく浪費することで気晴らしを楽しんでいく。

・それを楽しむ中で、ある時何かが不法侵入してくる。

・それまでの世界が崩壊し、思考を強制させられる。

・それを経て新たな世界が創造される。

・そのプロセスで物を楽しむ力は向上している。

・楽しむ力の向上は、物を受け取る能力の向上だから、より不法侵入が起こりやすくなる。

・つまりまた思考が生まれやすくなり、新たな世界の創造が行われる。

・その繰り返しで楽しむ力は向上していく。

・そしてどこで何をしていれば不法侵入が起こってくるのか。これは経験によって明白になっていく。

・そこで待ち構えておけ。

こんな話ですね。

こっちのほうがわかりやすいかも。

楽しむ→不法侵入→世界の崩壊→
思考→世界の
創造→楽しむ力向上→
楽しむ→・・・・

このサイクルを回していけってことですね。

僕のイメージでめっちゃ雑に言うと、

・これまで素通りしてきたものにちゃんと向き合う中で、違和感がやってくる。

・そこで思考が生まれ、より楽しめるようになり、より違和感に気づきやすくなる。

・そのサイクルで動いてる間は退屈は存在しない。

こんな感じ。

最後の「待ち構えておく」の部分は説明してないんですけど、

この引用を見てもらうとニュアンスが伝わると思います。

「思考は強制されるもの」と言った学者が、あるとき質問されました。彼は映画や絵画が好きです。

その時の一場面です。

「なぜあなたは毎週末、美術館に行ったり、映画館に行ったりするのか?その努力はいったいどこから来ているのか?」という質問に答えてこういったことがある。「私は待ち構えているのだ」

この感覚めっちゃ面白くないですか?w

要は、

「何してればこのサイクルが回っていきやすいのか」

ってことですね。

自分にとってのそれは何か。
これは経験によって明白になっていきます。

つまり、ひとまず全部楽しんでいけってことですw

その上でこの循環を巻き起こしていけってことですw

行動指針に落とし込むとしたら

この本の考え方を行動指針に落とし込むとしたら、

「人間は物理空間や情報空間の移動をせずにはいられない」という前提を踏まえつつ、今まで素通りしてきたものを五感をフルに使って楽しむ。その循環を起こしていく。

こうですかね。

このスタンスが一番しっくりくる。

暇と退屈の倫理学に関連した本

実践編としておすすめの本と
本書のテーマに興味ある人向けの本を
紹介しとこうと思います。

暇と余暇の倫理学の実践編として

この本を読んでいて

「目の前を楽しむ、物を楽しむって
やっぱ大事やな~」

って思いながら浮かんだ本があります。

それがこれです。

フランス人は10着しか服を持たない

高級料理を食べて、たくさん買い物をして、
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心からの満足を感じられないあなたへ。

典型的なカリフォルニアガールだった著者は、
フランスの貴族の家にホームステイすることになる。
その家を取り仕切るマダム・シックから学んだのは、
毎日を“特別な日”のように生きること。

*間食はせず、食事を存分に楽しむ。
*上質なものを少しだけ持ち、大切に使う。
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大昔に読んだことあって、
というかこのシリーズ3つあるんですけど
全部読んだことあってw、

いかに今日という一日をちゃんと生きるか、適当に生きないか。
そんな態度が印象的でございました。

歌の一曲すら適当に聴くから日常がおもんなくなっていく。

テクニカルなことに偏ってなくて、
なんというか真正面から生を全うしてる感じ。

日常の話題がメインなので、
すぐに取り入れたいものがいくつか出てくると思います。

物を楽しむという生活の実践編として
一回は読んでおくといいやつですね。

「暇」「退屈」「遊び」という概念に関心がある人向け

これも昔読んだことあっておもろかったです。

「暇と退屈の倫理学」のテーマに関心がある人が読んで、
それこそ退屈することはないと思いますw

これです。

余暇の社会学
この本でも

「どう余暇を過ごすかは、どう生きるかである」

みたいなニュアンスで語られます。

「余暇」「労働」「生きがい」に関連した総合的な話がおもしろいです。

こういう言い方するとよくないのかもしれませんけど、10章の「余暇社会の人生論」

ここだけ読むだけでもいいと思いますw

十分に思考を強制させられるのでw

まとめ

かなりボリューミーになりましたが、
僕が解釈した主張は非常にシンプルです。

五感を使え、物を楽しめ。

楽しむ→世界の崩壊→思考→
創造→楽しむ力向上→楽しむ

のサイクルを回していけ。

これでもう退屈に悩まされるとはなくなりますねw

感想や質問などはこちらから受け付けております。絶賛返信中です!

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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